2011年9月16日金曜日

雄一の入院

今年の夏場になってからの雄一の体の変化が気になっていた。
今年の春に田舎のお爺ちゃんを皆でお見舞いに行った時は何も感じなかった。
服を着ていても明らかに細くなっているのが解る。

 自分は病院で勤務しているのに、「早く病院で見てもらえ!」といっても本人は別に体調が悪い訳でもないし「うるさいなあ」ぐらいにしか聞いていない。
けど、この8月になって明らかに食事が急に細くなり、ごはん半分も食べれない様だ。ここまでなっても診察にも行かず、体力に任せて病院の勤務、夜勤もこなしている。

 とうとう体力も続かずやっと勤務する病院の先生に見てもらった。
それが9月2日。
すぐに先生も異変に気付いたようですぐに仕事をやめさせ自宅療養になった。

 僕は病院で業務するその環境の中で何で誰も気付かないんだろう・・・
多分、昼食も同じ状態のハズだ。雄一の周りの人が少しぐらいは気がついいてもいいのに・・・と思っていて一度、勤務する病院に相談しに行こうか・と思っていた。
今となっては僕もすぐに行かなかったのが、とても悔やまれる。

 自宅で療養中も僕の目には、どう見てもこれはおかしい、尋常じゃない、と感じていたが、本人は調子が悪いだけですぐに仕事に戻ると思っていてテレビを見ながらベットに転がっている。

 そして9月9日に胃カメラ。
胃の組織も取って検査、その他色々な検査もしてくれたようだ。

 9月13日、自宅に帰ると雄一はいない。すぐに入院したらしい。担当の先生から夜10時頃に本人には合わずに来てくれと言う。
これは普通ではない。でも若いしまさかね・・と思いながら病院に向かった。

 担当の先生は解り易く詳しくそして隠すところなく正直に説明してくれた。
症状は胃ガン、それも相当進行している。特に若いし進行が速い。ガンの1~4までのレベルでいうとすでに4のレベルだそうだ。
しかもそれが腹膜にも移りお腹の中に多数散らばっている。まだカメラ程度では解らないがそれは間違いがない。
 ガン性腹膜播種という症状らしい。相当やっかいな症状で今の状態では手術もできない。進行も早くこのままでは1~3か月・・なんて事を話された。

 頭よりも脳みそを叩かれたようなショックを受けた。
「何で・・・タバコも吸わないし、酒もほとんど飲まない。贅沢もしない。仕事も順調でやっと自分のお金でおしゃれをしたり、海外旅行をしたり、これからという時だ。何で雄一に・・・」

 治療方法は暫く体力を戻してそれから化学療法、治療でガン細胞を減らし手術できる様になれば可能性がある。ただしそれは抗がん剤に対しどこまで体力が勝るかの勝負になる。可能性はかなり低い。
色々ネットで情報を調べても同じ様な事が書いてある。

 後で三重中央の先生に聞いた話では、抗がん剤は早く成長する細胞を攻撃するらしい。血液なんかは日々生まれている。だからそれらの必要な細胞にも攻撃を仕掛ける。それが合わない人には大きな副作用になる。
けれど最近ではいい薬も出て来て同じ様な腹膜播腫でも劇的に効果が出る人もいるそうだ。確率は低いけどね。
 今はそれにかけるしかない。

 そのあと、もう11時を回っていたが、苦しそうに雄一は横になって寝ていた。本人にはガンは伝えない。
最善の方法をと、愛知のガンセンターに紹介状を書いてもらう、と先生とは了解を頂いたので、その時に話をしようと決めた。家族にも雄一にも覚悟がいる。
雄一には「今の内に悪いところは全部直すんだぞ。治るまで出て来るな。だから覚悟決めてしっかり治せ」と強気で話した。
自分の体に、細胞に戦い抜く事をイメージして思い込め、とも。
何が何でも頑張り抜いて欲しい。出来る事は何でもしてやりたい。

 その夜は眠れず、色んな事を思い出し考えた。僕が普段、私生活には特に厳しく言い過ぎたのもずっと悔やんでいた。雄一にもストレスは有っただろう・・。

 9月14日
仕事も手につかず、うわの空で終えて病院に行くと、昨日とはうって変って元気になっている。ベットを立てて普段着を来てテレビを見ている。少し熱は有るようだが顔色もいい。この調子なら体力を戻して戦えるかもしれない。少しその夜は安心して疲れもあるしすぐに寝てしまった。

 9月15日
 今日は木曜なので会社は休み。9月までは土日出勤だ。昨夜の帰りに有希子のところにも行き事情も伝えた。散髪もしたかったので朝10時から頼んでおいた。
早く起きて色々していると、9時頃に病院の先生から電話がかかる。

 「お腹の中の腸のどこかで穴が開いてしまったようで、場所は特定出来ないが事象からそれは間違いはない。緊急手術が必要です」
ガンが腸にも転移し膨らんで詰まっているところが多分破れた・・・。それまでの検査でお腹にガスを入れて検査したのも一つの要因かも、とは僕は感じた。雄一はそれがとても気持ちが悪く口や鼻に戻ってくるので嫌がっていた。

 すぐに病院へ行き説明を聞いた。とにかくこれは救命の為の緊急手術。すぐにやらないとお腹の中に便や菌が回って最悪血液中に感染してしまうと1~2日に死亡してしまうらしい。最悪の状態を超えるには手術にかけるしかなかった。
雄一にもガンの話はしていないが、その話を先生はもうしてくれていて、本人も了解している。人口肛門になるかも知れない、という話もしている。

 病室に救急隊が来て苦しんでエビのようになっている雄一を運んで行った。

 11時
 三重中央の先生も若いテキパキとした好感の持てる先生だ。まだ30代前半だろう。ガンは本人には伝えていないとこの先生にも引き継がれていたので、僕にもその様な話をする。「僕らは全部聞いています。腹膜播腫の事も」と言うとしっかり細部まで、手術の危険性も説明してくれた。ガンの治療も行っているしその対応も詳しい。愛知ガンセンターとの情報、交流もある。
この先生なら状況に適格に対応するだろう、と感じた。

 雄一はお腹の痛みが激しくずっとエビの状態・・。辛そうだが親は何もしてやれない。頭をなでるだけ。代われるものならは代わってやりたい・・と母親は陰で泣いている。
何本も点滴をつけられていながら、苦しみながらまだ雄一は「昨日まで調子良かったのに・・・仕事も早く戻らな・・」とこんな手術前の状態でもそんな事を言っている。
 1時に手術に入る前にも先生に「いつごろ戻れる?仕事あるし・・人口肛門はすぐに外せる?」と聞いていたようだ。

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